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English Gardens

ロンドン備忘録

ヒドコート・マナー・ガーデン(前編)

6/8

 

毎回写真データを携帯に送ってから書き出す。

今日の前半分の写真を送ろうとしたら、「90枚」と表示された。…前半で?

終わらない6月8日の始まり。

 

あと、「パディントン駅に行こうとしたら地下鉄が止まらなくて通り過ぎた」のはオックスフォードの日ではなくて今日の話だった。

通りで急いでいたわけだ。

ちょうどいいので割愛。

 

パディントン駅から北西に1時間50分。

Morton-in-Marshという駅で降りる。

前回学んだので、今日は最初からタクシーに乗るつもり。

優しそうなおじいさんドライバーに声をかける。

「僕は他に行かなくちゃいけないんだ。他の人に頼んであげるよ。」

 

そう言って頼んでくれたのは、

スキンヘッドに筋肉むきむき、肩から腕にかけてがっつり入ったタトゥーにサングラスをかけたお兄さんだった。

Oh…

人は見た目ではない。人は見た目ではない。

 

助手席に乗って行き先を告げると、走り出す。

余計なお喋りをしない人でよかった。

醸し出すオーラが怖くない。

たぶん、いい人だこの人。

 

目的地が近づく。

「帰りも要るんだろう。」

はい、お願いします。

「何時に行けばいい。」

電車の時間を見るのでちょっと待ってください。

(10時半に着いて、何時間あれば私は帰りたいと思えるんだろう。)

5時10分の電車があるんですが、何分くらいあれば着きますか?

「20分くらいで着くよ。」

うーん、じゃあ、4時半に来てもらえますか?

「4時半だな。」

(到着。)

「帰りもここに来るから。車の後ろに書いてある電話番号を撮っておくといい。時間を変更したくなったら電話して。」

そう言われて、車の上の数字を撮っていたら、「そっちじゃなくてこっち」と降りて来て教えてくれた。

最後にもう一度時間を確認して去っていく。

いい人だ。

 

入り口前の団体から、日本語が聞こえて来る。

日本人のツアー客。そういうツアーもあるんだ。

 

  • Hidocote Manor Gardens

今度は「イギリスで一番美しい庭」らしい。

なんだっていい。美しければ。

 

赤川裕さんの言葉を借りると、

「美しいコッツウォルド地方の最北端にある20世紀初頭造園の名園。現代の英国庭園の路線は、この庭でまず敷かれたといっても過言ではない。この庭にあるのは精緻な趣向であり、大言壮語するより人の身の丈に見合った小空間を連ねて、訪ねる人をそっと包んで交流しようとする。」(『イギリス庭園散策』より)そうです。

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いきなり。

一瞬で胸がいっぱいになる。

朝は雨だったのか、可愛い雨粒がたくさん。

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こちらにもホワイトガーデン

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はじめのうちは、日本人の団体客に巻き込まれながら歩く。

「これ、何かしら。」

なんて話をしていると入りたくなるのは、日本でもそう。

 

アジサイみたいだけど変な形ね。」

そういうアジサイもありますよね。カシワバとか。

「そうそう、あるわよねえ。」

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「カメラマンの方?」

(NikonD5500は、カメラしない人にとってはゴツい。)

あ、いや、趣味です。

「一人で来てるの?」

はい。

「はー、すごいわね。」

近くにもう一つ庭があるんですけど、そこには行くんですか?ここだけ?

「そうなの?ここだけよ。1時間半ほど。ツアーだから仕方ないけど、私達はそれが楽でいいわ。」

確かに、楽なのはいいですよね。

 

それは嘘ではないけれど、1時間半では無理だ。

死ぬまでにこういうことがしたかったとして、本当に私がやりたいように歩けるのは、今だけかもしれない。

結婚や子育てをしていたらできないし、それが終わってからだと体力的にどうだろうという気はするし、逆に学生だったら一人でタクシーに乗る度胸もお金もなかったと思う。

人生のタイミングって不思議なもの。

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メコノプシスも、フラワーショーの会場にあるのと、庭にあるのでは全然違う。

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本当に美しい青。

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シシングハーストに行ったからか、「すごい庭」にすこし耐性ができている。

考えることができる。

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直線的な生垣と、イギリスにしかできない境界のない植え込みの、心地よいコントラスト。

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荷車のある風景が好き。

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初めて見る色合いのcomfreyちゃん。

自分が調べたのと、現地の呼び名は違ったりするので、近くにいたおばあちゃん(イギリスの)に聞いてみる。

 

すいません、この花ってなんて言うか分かりますか?

「まあ、この花?ちょっと待ってね。(他のおばあさんを呼ぶ)彼女は花のことならなんでも知ってるわ。ねえ、このお嬢さんが花の名前を知りたいんですって。」

「これ?これは…分からないわね。(全員コケる。)よく見るけど。触ると手がかぶれたりするからやめた方がいいわ。(庭に植えるのを?)」

どうもありがとう。

 

身近な植物ほど知らなかったりするよね。

痒くなるみたいなことを言っていたけど、調べたところ薬にもなるらしい。

まあ、何かしらそういう作用のある植物なんでしょう。

 

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Long Walk

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反対側

 

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その奥に、そこまで誰も来ないようなスペースがあった。

敷地の端の、外に向いたベンチに座る。

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なんでもない、イギリスの風景。

私は、この風景を知っている。

こっちに来てから見てきた景色が、集約されて、再編されて、記憶の中の何かと繋がって、既知の感覚になる。

今までは、自分の中だけにあるものだった。

涙が出てくる。

自分が「ここにいる」んだと、初めて感じる。

それは、今まで自分が「いなかった」という事実の確認でもあった。

 

おじいさんの

' I hope your dream comes true.'

の言葉を思い出す。

今まで誰も望んでくれなかった、私もすっかり無意識に追いやっていた「夢」はたぶん、

ベンチに座って美しいイギリスの庭を眺めること。

 

 (イギリスに来てるから普通に聞こえるけど、田舎の中学生がそんなことを言ってたらやっぱり変だ。自分でもそう思うような生きづらい世界で、よく死なないでここまで来たね。と自画自賛。)

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空を見上げちゃったりする。

 

遠くから、羊の鳴き声がする。

あとは数種類の鳥の声。

それだけ。